前回(2019年12月23日)のコラムでは、後継者難に悩む企業について、それぞれの事業環境や経営者の考えに応じて、異なった支援方法で対処する必要があるのでは、という私見を紹介しました。
ところで後継者難に悩む企業とは、どのような企業のことでしょうか。
あえて身も蓋もない言い方をすると、「後継者を引き付けるだけの魅力に乏しい企業」あるいは「後継者の育成努力を怠ってきた企業」と言えるのではないでしょうか。つまり、後継者難の原因を作っているのは、後継者の不在を嘆く経営者自身であるということになります。
前回のコラムでは、「後継者難による休廃業は雇用や取引先に影響が及ぶため、支援機関を活用して早期に事業承継を検討する必要がある」との秋田魁新報の記事も紹介しました。根があまのじゃくな私は、この記事を「教科書みたいなコメントだな。」と覚めた目で見ていました。
かなり乱暴な主張かもしれませんが、「後継者を引き付けるだけの魅力に乏しい企業」や「後継者の育成努力を怠ってきた企業」が仮に廃業をしたとしても、社会経済全体の活性化の観点からは悪いことばかりとはいえません。解雇された従業員は、現在の売り手市場の環境下で、より成長性の高い企業に就職する可能性が残されており、取引先も新たな条件でより安定した取引相手を探すことができます。さらに、廃業で不要となった土地や建物は、新たな用途に転用することも可能です。つまり、市場からの退場を促すシグナルが点灯している企業は、「廃業=悪」という先入観を捨てて、廃業の選択肢について真剣に考えるべきだと思うのです。もちろん急な廃業で不要な混乱を招かないための準備や外部からの支援はとても重要です。また、私自身、父親が創業したお菓子屋を父の死後に自らの手で廃業した経験があるので、廃業のつらさはや口惜しさはわかっているつもりです。(詳細については第3回コラムをご覧ください。)
先日ある銀行の支店の新年会に参加し、たまたま隣に座った30代後半の創業経営者の方と会話をする機会がありました。
お若いのに、岩手と秋田で、しかも複数の業種にわたって事業を展開されているのですね。
今のご時世、従業員集めが大変ではないですか。
私自身は営業に絶対の自信があったため、創業当初は、なぜ俺のようにできないのか?といって従業員を叱ってばかりいました。
でも、ある時気づいたのです、従業員は決して私と同じでは無いことに。
会社の実力は従業員の実力の総和です。
今は従業員を信頼して拠点の運営を任せ、私は従業員が最高の実力を発揮できるように全体のコーディネートに力を注いでいます。
「あなたの会社は何を作っているのですか?」と尋ねられた若き日の松下幸之助が、「人を作っています。」と答えたというエピソードを読んだことがあります。これからの企業経営者は、「人づくり」が最も大切な仕事になるのではないでしょうか。それが、10年後20年後における最高の後継者対策になるように思えてなりません。