コラム

第3回 続々 菓子屋の息子

 運良く地方銀行員としてのスタートを切ることができた私でしたが、後継ぎがいなくなったお菓子屋はその後どうなったのでしょうか。

 結論から先に言いますと、実家の菓子店は、平成18年に廃業いたしました。父母が創業した時から45年の歳月が経っていました。廃業する8年前に母が病気で亡くなり、その5年後には父も病を得て亡くなりました。父が亡くなった時、私は秋田市内の支店で支店長を務めていました。

 もう時効なので正直にお話ししますが、何とか店を続けてもらいたいという従業員の訴えにほだされて、3年の間、銀行の支店長をしながらお菓子屋の経営に携わっていました。今でこそ働き方改革の一環として兼業が推奨され始めていますが、その当時銀行には兼業禁止の規定がありましたので(多分今もそうだと思います。)、嫌がる妻を拝み倒して名目上の代表になってもらい、二人三脚でにわか経営者を演じました。

 しかし、お菓子屋の経営は我々夫婦が片手間でできるほど甘くはありません。毎年赤字が続き、このままでは父が残してくれた手持ち資金が底をつくことが次第に明らかになります。そこで従業員を説得し、経営を引き継いでから3年後の父の命日を期して、廃業に踏み切ったのでした。

 今にして思えば、わずか3年間とはいえ、実家のお菓子屋の経営と廃業に関わったことは私にとって得難い経験でした。

 私が「中小企業診断士」の試験勉強を始めたのも、このことがきっかけでした。

(3回にわたった「菓子屋の息子」シリーズはひとまず終了します。)