書名:ハート・オブ・ビジネス
著者:ユベール・ジョリー
発行日:2022年7月24日(第2刷)
発行者:英治出版
価格:2,200円(税抜き)
書評
著者のユベール・ジョリーは、フランスのエリート校を首席で卒業し、世界的なコンサルティング企業のマッキンゼーでパートナーを務め、数社の経営トップを歴任し、数々の企業再建に成功したというなかなかの人物です。かつては自分の身の回りに起きている出来事をすべて把握して、細かな事でも自ら指示を出さないと気が済まない、完全無欠を絵に描いたようなトップダウン型の人でした。しかし、この本を書いている今は違います。本書で彼は、人は不完全だからこそ他者と深くつながることができると説きます。そして、その心境に至るまでの自らの心の軌跡とビジネスに対する考え方の変化を、事例を交えて丁寧に紹介しています。
『完璧を追い求めない』『自分の弱さを受け入れる』『周りと比べたベストではなく、自分の中でのベストを目指す』『アメとムチで人をロバのように扱うと、パフォーマンスもロバのようなものになる』『会社の究極的な目標はそこで働く者たち全員の成長と充実』
事業規模の大小を問わず、これからの企業の経営のあり方を考えるうえで、本書は実に多くの示唆に富んでいます。経営者の方はもちろん、ビジネスにかかわる全ての人にとってお勧めの本です。
ところで私事で恐縮ですが、この本を読んでかつて銀行員だったころの私を思い出しました。大した実力も無いのに、自信過剰でうぬぼれが強く、何ごとも自分の思い通りにいかないと気が済まないサラリーマンでした。意見の異なる上司には喰ってかかり、言うことを聞かない部下にはネチネチと説教を垂れているような、わがままで超扱いにくい人間でした。(当時の同僚の皆さん、ごめんなさい。)20年以上前の恥ずかしい自分を脳裏に浮かべて、冷や汗を流しながら本書を読み終えました。