2021年10月に実施された衆議院議員選挙で、岸田首相率いる自民党が長年連立を組む公明党とともに安定多数を獲得しました。わずか1か月前に菅前首相からその座を譲り受けて臨んだ総選挙でした。早いものであれから間もなく3年がたとうとしています。
自らの力を頼りに実力で這い上がってきた我が郷里の先輩菅さんは、「仕事人内閣」を標榜して、ワクチン接種体制の構築、携帯料金の引き下げ、不妊治療の負担軽減、デジタル庁の新設、と矢継ぎ早に重点施策を断行し、さまざまな議論があったにせよ、東京オリンピックを開催し無事終了させました。今振り返ってみると一人の首相が一年間で成し遂げた仕事としてはかなりのものです。
菅さんの前任者の安部さんが、「アベノミクス3本の矢」「地方創生」「1億総活躍社会」「働き方改革」「全世代型社会保障」とインパクトのあるネーミングの看板政策を立上げ、「やってる感」を演出しただけで終わったのに比べると、その差が際立ちます。
それにもかかわらず、菅さんがわずか1年余りで退陣せざるを得なかった理由は、国民の不人気でした。菅さん自身は、政治家は結果を残せばわかってもらえる、という自負がありました。しかし、どのような過程を経て結果を残し、その結果が国民の生活にどう影響するのかについて、丁寧な説明が欠けていました。
前任者の菅さんの強引な手法に対するアンチテーゼなのか知れませんが、「聞く力」を標榜しているのが岸田首相です。しかし、最近の岸田内閣は支持率24%に対し不支持率55%と、不支持率が支持率の2倍以上となっています。菅内閣退陣時の支持率34%(不支持率は56%)と比べても人気の無さがひときわ目立ちます。派閥の裏金問題という自民党にとっての逆風の中で、党の最高責任者である岸田総裁がうやむやのうちに幕引きを図っているのではないかとの疑惑も、支持率の低さにつながっています。
3人の特長を一言で表すと、「ネーミングに全力投球」(安部元首相)、「結果がすべて」(菅前首相)、「聞き流す力」(岸田首相)といったら、支持者の方に怒られるかもしれません。
これからの時代の中小企業経営者は、会社の経営方針を立案してそれを掲げて終わるのではなく、社員にその方針の目的と実行過程を丁寧に説明する姿勢が必要とされます。また、社員の意見を引き出して、自分の意見と異なる場合も、ひょっとしてその中に経営のヒントが隠れているかもしれないと考える謙虚な姿勢も大切です。
岸田首相と前任者たちの仕事ぶりに焦点を当ててみると、令和の時代の中小企業経営者には、「社員の心に訴える力」「困難を直視し実行する力」そして「他者の意見に耳を傾け真摯に考える力」、これらの力が必要不可欠であると言えそうです。