コラム

第10回 もし菅“前”首相が中小企業の社長だったら

もし菅“前”首相が中小企業の社長だったら

 4年ぶりに実施された衆議院議員選挙で、岸田首相率いる自民党が長年連立を組む公明党とともに安定多数を獲得しました。

 つい1か月ほど前に不本意な形で総理の座を岸田さんに譲り、今や役職もなく派閥も持たない一議員の立場となった菅前首相の心中はいかばかりかとお察しします。

 コロナ禍の第5波の終息が見え始めた矢先の、突然の退任表明でした。1年遅れで開催にこぎつけた東京オリンピック・パラリンピックも、大小さまざまな騒動はありましたが、無事終了し、国民へのワクチン接種も前首相の大号令のもとで大きく進展しました。

 それなのになぜ、秋田県出身者初の総理大臣は就任1年余りで退任することになったのでしょうか?

 私は政治評論家ではありません。ましてや超能力者でもありません。ですから、あらかじめこのような事態になることを予想することはできませんでした。しかし今考えてみると、嫌な予感はありました。ちょうど1年前のこのコラムで菅さんの首相就任をお祝いしました。その記事の一部を引用します。

(前 略)

 ところで、そんな菅首相の政権運営に死角はないでしょうか?

 現実の会社の社長の役割は、目の前の仕事をこなすだけではありません。社員に会社の現状と課題を丁寧に説明し、社員とともに会社の将来を語り合うことは、社長にしかできない大切な役割です。自分の言うことを聞かないからと言って、社員をいきなり切るのは論外です。問答無用の荒廃した社風が出来上がってしまいます。そうなれば、有為な人材は会社を去り、おべっか上手は社長にすり寄り、それ以外の社員はだんまりを決め込むでしょう。

 実際に私の見聞きした企業の例でも、異論を封じて成果を急いだ場合、短期的に業績が上向くことはあっても、中長期的には組織は確実に衰退します。一国の総理とて同じです。

  新しい令和の時代は、中小企業にとっても、そして日本にとっても、リーダーの丁寧なコミュニケーションのあり方が、これまで以上に重要になる時代だと思います。

 「不言実行」「黙ってオレについてこい」「俺の背中を見て学べ」かつては、こうしたことがリーダーの美徳と言われた時代がありました。しかし、今や時代は大きく変わりました。

 令和の時代の中小企業経営者の皆さん!!会社にとって都合の悪い事実も社員とともに共有していますか?自分の意見を述べる前に社員の意見を引き出そうとしていますか?そして、企業のリーダーとして実現したい夢を、日頃から社員とともに語り合っていますか?