書評

第3回 いつ倒産しても良い経営

第3回 いつ倒産しても良い経営

書名:いつ倒産しても良い経営

著者:髙瀨 拓士

発行日:2013年9月20日(第1刷)

発行者:幻冬舎メディアコンサルティング

価格:740円+税

書評

 「いつ倒産しても良い経営」今回ご紹介する本のタイトルもかなり刺激的です。

 もちろん著者は世の経営者に倒産を推奨しているわけではありません。そうではなく、そもそも私たちが生きているこの世界は流動的で、将来何が起こっても不思議ではないのだから、経営者、特に中小企業の経営者は、仮に明日自社が倒産したとしても、お世話になった取引先に迷惑をかけたり、従業員が路頭に迷うことのないよう、普段から心がけるべきだと言っています。倒産は悪だと決めつける世間一般の常識とは一線を画した、深い意味を持つ言い回しです。

 言うは易く行うは難し、と言いますが、著者には自らも中小企業の経営者としてこれを実践してきたという自負があります。といっても、著者は根っからの中小企業経営者というわけではなく、異色の経歴の持ち主です。

 著者の髙瀨拓士氏は1939年(昭和14年)生まれの御年80歳。工業高校卒業後、日立製作所に入社し、大型コンピュータの開発設計に従事します。37歳の時に取引先企業の経営支援のために工場長として出向、翌年の取締役就任と同時に日立製作所を退社します。その後同社の米国現地子会社の立ち上げなどに従事したのち、51歳の時に株式会社日本コンピュータ開発へ経営支援のために転籍し、54歳で同社の社長に就任。現在は同社の最高顧問を務めている人物です。

 企業はいつか倒産するものという前提に立てば、社員を会社依存型に育てるのではなく、自立型社員に育てることこそ社員教育の基本ということになります。著者にとって企業は、昔も今も、最高、最強の社会教育機関なのです。

 本書の「おわりに」の部分に、著者のこんな言葉が載っています。この本を著した74歳の時の言葉です。

「リスクのある人生は面白い」
「リスクのある仕事にこそ取り組む価値がある」
「差し障りのある話にこそ、聞く価値がある」

 64歳という微妙な年齢にコンサルティング事務所を始めた私にとって、勇気百倍となる言葉です。