読者の皆さん、お久しぶりです。生来のなまけ癖に加え、仕事がちょっとだけ忙しかったこともあり、この欄への掲載もほぼ1年ぶりのご無沙汰となりました。
「少数異見」の再開第1回目のテーマは、「ゼロゼロ融資」です。
お隣の中国のようにゼロコロナ政策を堅持している国は別ですが、近い将来のコロナの終息を見越して、世界各国の政策は感染防止優先から経済優先に舵を切っています。
私に相談を寄せてくる方々も、コロナ禍により急減した売上高はようやくコロナ禍以前の状態に戻りつつあるようです。
しかし、大きな問題が残っています。コロナ禍により膨れ上がった借入金の返済です。ここで、コロナ関連融資について簡単におさらいしてみましょう。
・2020年3月…日本政策金融公庫と商工中金による「新型コロナウィルス感染症特別貸付」がスタート、元本返済最大5年猶予、当初3年間無利息
・2020年5月…民間金融機関による同様の特別貸付がスタート、元本返済最大5年猶予、当初3年間は市町村による全額利子補給、信用保証協会の保証料無料
政府の肝いりで大々的に推進された元本返済ゼロ利息支払ゼロのいわゆる「ゼロゼロ融資」は、企業倒産と失業の抑制という面で、とても大きな役割を果たしたことは確かです。
そうは言っても、「ゼロゼロ融資」は基本的には赤字を補填するための資金です。新たな収益を生み出すための設備投資資金や、売上の増加に対応するための運転資金と違い、ほとんどの人にとって将来の返済のあてが思いつかないまま借りた借金です。さすがにもらったつもりで借りた人はいないと思いますが、しかし、民間金融機関による「ゼロゼロ融資」の残高は約40兆円、日本全体の民間金融機関の融資残高の約7%と言われています。日本中の中小企業の経営者は、この膨大な借金をどのようにして返したらよいのでしょうか?
偉そうなことを言うつもりはありません。でも、次のことは言えそうです。黒字回復が視野に入っている企業は、これまで以上貪欲に収益を確保する必要があります。次に、赤字継続が予想される企業は、アフターコロナに向けた新たな事業を模索します。最後に、コロナ禍以前から続いた赤字が拡大し、経営の存続が危ぶまれる企業は、廃業の選択を視野に入れながらも、人心の一新を含む抜本的な経営の立て直しを図ります。
いずれの場合も、金融機関に対し一時的な返済猶予をお願いする必要があります。ただし、返済猶予はあくまで「一時的」で、「永遠の返済猶予」はあり得ないことを肝に銘じる必要があります。企業経営者にとっては、当たり前過ぎるほど当たり前のことなのですが・・・。
企業の収益力(見込み) | 考えられる対応策 | |||
コロナ前 | コロナ中 | コロナ後 | 当面の対応策 | 中・長期的な対応策 |
黒字基調 | 赤字化 | 黒字回復 | ・予定通り返済を開始 ・一時的な返済猶予の要請 |
・より強固な収益力獲得 |
黒字基調 | 赤字化 | 赤字継続 | ・一時的な返済猶予の要請 | ・コロナ後に向けた事業再構築 |
赤字基調 | 赤字拡大 | 赤字継続 | ・一時的な返済猶予の要請 | ・経営のあり方の抜本的見直し ・廃業を視野に入れた経営相談 |