書名:日本・破綻寸前
著者:藤巻 健史
発行日:2020年3月20日(第1刷)
発行者:幻冬舎
価格:1,300円+税
書評
副題に「自分のお金はこうして守れ!」とあります。守るほどのお金を持っていないにもかかわらず、私がこの本を手に取ったのは、自分のことはともかく、この国の借金のあり方が尋常ではないことに常々不安を感じていたからです。
どれほど国の借金が多いかについて、こんな記述があります。ちょっと長いですが引用しましょう。
「2019年12月末現在で国の借金は1111兆円ですが、この返済は大変です。10兆円ずつ返して111年かかります。2020年度は予算段階で税収+税外収入が71兆円ですから、歳出を(10兆円浮かすために)61兆円に抑えても、返済に111年もかかるのです。」
111年!今年生まれた赤ちゃんが生きているうちには返済できない額、ということになります。ちなみに、2020年度の公債費をのぞく当初予算の歳出額は79兆円ですので、実際は歳出を61兆円に抑えるどころか、逆に借金を8兆円も増やす予算編成なのです。しかも、その後のコロナ対策のための補正予算で国の借金はさらに増えることになります。私は、コロナ対策をするな、と言っているのではありません。そうではなく、コロナ対策のための借金をするなら、どのように返済するかまでを考えるのが当たり前の政治家の役目ではないか、と言いたいのです。
国の収入と借金の問題を、もっと身近な中小企業のケースに例えてみましょう。仮に、あなたの会社の年間売上高が7億1千万円に対して、借入金が111億1千万円(売上の15倍超!)あったとします。しかも今年の経常利益の見込額は8千万円の赤字です。あなたは、取引金融機関に借入の相談に行き、次のようなやり取りをすることになります。
あなた(=政府)「支店長、今年も赤字が出るので8千万円お金を貸してください。」
支店長(=国民)「返済財源はどこにありますか?」
あなた「そんなものありません。どうしても貸してくれなければ倒産するだけです。さあ、貸してください!!」
支店長「…(絶句)」
通常の方法ではこの国の借金の返済は無理だ、というのがこの本の著者の結論です。では通常のやり方ではない借金の返済方法があるのでしょうか?著者の藤巻氏は、近い将来ハイパーインフレ(急激に進行する物価上昇)が発生することで、結果として国の借金の返済が進むことになる、と予言します。一体どういうことでしょうか?
仮に、日銀がお札をどんどん刷って市中に過剰なお札が出回り、物価が100倍に跳ね上がったとします。(日銀法では禁じられていますが、とりあえず無視します。)すると、先の中小企業の例では、年間売上高もこれまでの100倍の701億円となります。一方借入金の元本は111億1千万円で変わらないため、返済が格段に楽になるというカラクリです。
もちろん著者は、国民に多大な犠牲を強いるハイパーインフレの到来を待ち望んでいる訳ではありません。ただ、自らも参議院議員として活動し、この国の為政者の責任の取り方(というか、責任の逃れ方)を目の当たりにした経験から、今こそ国民は自分のお金は自分で守るべきだと主張しています。
著者の藤巻健史氏は1950年生まれの70歳。大学卒業後三井信託銀行に入行。米国留学を経て85年にモルガン銀行入行、「伝説のディーラー」として腕を振るいます。その後、2013年から2019年までは、日本維新の会に所属して参議院議員を務めました。