書評

第4回 頭に来てもアホとは戦うな!

第4回 頭に来てもアホとは戦うな!

書名:頭に来てもアホとは戦うな!

著者:田村 耕太郎

発行日:2014年7月30日(第1刷)
    2019年4月30日(第32刷)

発行者:朝日新聞出版

価格:1,300円+税

書評

 ウォーキングの途中にトイレを借りに入った本屋さんで偶然見つけた本です。表紙には「人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法」、帯には「アホのかわし方を知らずに人生で損してる人は読むと楽にできますよ」と言っている(ようにみえる)推薦者の写真。かなり胡散臭いなあ、と思いながら手に取ると、見開きのページにこう書いています。

自分にこう問いかけてみてほしい。
怒りや悩みで時間を無駄にしてはいないか?
他人の目ばかり気にしていないか?
本当にすべきことに全力を注いでいるか?

 この文句で、一転買うことに決めました。

 私の人生を振り返ってみると、若い銀行員時代は、同期より出世が遅れたといっては一人ウジウジと悩み、後年支店長に登用され、次はもっと大きな支店の支店長になる筈と思いを膨らませていると、本部の傍流部署(!?)に呼び戻される。こうしたことの繰り返しでした。その間、同期や後輩たちはどんどん出世を遂げていきます。私は彼らを羨ましく思いながらも、「本当は俺の方が実力だってお客さんの評判だってずっといいのに!」と根拠のない恨み言を口にしているような人間でした。

 その傍流部署では、定年までの6年間に4人の部長に仕えることになりましたが、うち2人は私より後輩でした。私のプライドはもうズタズタです。

 でも、結果としてこの6年間が私の人格を鍛え、今につながる第二の人生を決定づけることになるのですから、「人生はあざなえる縄のごとし」とはよく言ったものです。

 私の自分史の紹介はこのくらいにして、著者の経歴を紹介します。著者の田村耕太郎氏は、1963年鳥取市生まれの56歳。早稲田大学、慶応大学経営大学院、イェール大学大学院、デューク大学法律大学院を修了し、現在は国立シンガポール大学の大学院教授という肩書を持つほか、様々な企業や団体の取締役や顧問を務める多能な人物のようです。

 さらに、手元のスマホでウィキペディアを閲覧してみると、氏は大学卒業後山一證券に入社、頭角を現して留学生に選抜。その後妻の父が経営する地方新聞社に入社して、37歳の若さで系列紙の社長に就任。さらには鳥取県選挙区から参院選に出馬し、自民党から民主党に鞍替えしながらも2期務めています。一方で、衆院選や知事選にも出馬し、こちらは見事に落選しています。

 これだけ波乱万丈の人生を送った人が、わかりやすい文章でサクサク書いている本なので、2014年の発売以来32刷を重ねていることも頷けます。ただし、私が読者にお勧めしたいのは、著者の書いていることを鵜呑みにするのではなく、あくまでも自らの性格や経験と照らし合わせ、自分なりの解釈を交えながら読み進むことです。ちなみに、私としては、著者の主張の7割は「そうそう、わかるわかる」、残り3割は「うーん、自分とは生き方が違うな~」という感覚でしょうか…。